このような場面を推測してみましょう。

「〇〇ちゃん、車だよ」と、大人は車の玩具を〇〇ちゃんに見せながら遊びに誘ったら、○○ちゃんは大人の方へ頭と目を向けて、そこにある物を見ながら「車」と言う。すると、大人は「うん、車だよ。一緒に遊ぼう」と嬉しそうに返事する。ここでは、子どもは大人の声かけに応じて、頭と目を動かして目に入った物を見て「車」と言うことで、「車」という言葉をはじめて使った。実は、子どもはこのような経験を積み重ねていく中、徐々にたくさんの言葉を覚えて、使えるようになっていく。
ところが、自閉症児の場合、この場面ではどんなことが生じるでしょう?
「○○ちゃん、車だよ」と、大人は自閉症のある○○ちゃんに声をかけても、おそらく○○ちゃんは自分のやっていることに夢中になり、大人に何の返事もしないかもしれない。すると、○○ちゃんは「車」という実物と「くるま」という聴覚情報を結べず、結局「車」という言葉を学習できなくなる。
そこで、この場面を違う視点で考えてみると、「共同注意」というキーワードが出てくる。共同注意は、他者と同じ物事に注意を向けて、共通認識を形成することを意味する。この場面では、「子ども」、「大人」、「車」という3つの対象が存在し、「子ども」と「大人」の間に「車」に対して共同注意が起きている。なので、子どもが「車」という言葉をはじめて学習できた。

ツボミ園の児童発達支援では、国内の大学と連携し、無発語や発語の少ない自閉症幼児や、発語があるけれども人と目を合わせない自閉症幼児に対して、共同注意の視点から療育を実施している。このような支援を通して、自閉症児も、人と目を合わせながら有意味語を獲得し、語彙量を増やしていくことが期待できると思う。
